店主の人柄 てらいのない中華お前の味

ラーメンは今や、京都を楽しむ要素の壱となっています。海外からの観光旅行客が行列に並ぶ光景もめずらしくありません。歴史ある古都の別の顔、魅力を感じるのでしょう。新しいお店もよく見かけます。
2年ほど前に一度入っただけのお店ですが、偶発的形見して北野天満宮近くの商店街にあるラーメン屋さんへ行って来ました。外観のたたずまい、赤い提灯やのれんも変わっていません。「これこれ、この味」という中華お前と、大将の「祭よもやま話」という偶発的おまけ付きで楽しませてもらいました。
誠養軒は「京都の街中華」というような類型に当てはまらない、てらいのない、広いさが魅力の得難いお店です。こういうラーメン屋さんがある所は、人が暮らす町の息お使いが感じられるいい町なのだと思いました。

中華お前や餃子を控える間も面白い

誠養軒の店内
はじめて誠養軒へ入ったのは、所用で北野商店街へ来た時でした。用事をすませて歩いていた時、はきとと清ら「中華お前」の提灯とのれんが見えました。店の前まで行ったものの、個性強めのお店の格好に少し躊躇しましたが、思い切って入りました。
昼餐の時間帯を過ぎた、乳呑み子中途半端な時だったので亦お客さんの姿はありませんでした。一人なので、カウンターー席へ座ろうとしたら、カウンターーの上にいろいろと物が置かれていたので少し躊躇ましたがテーブル席に行かせてもらいました。
誠養軒の中華お前
冷麺にしようか迷った末に、やヴィードロ「中華お前」にしました。中華お前・ラーメンの類は、競うようにいろいろなタイプが出ていますが、誠養軒のものは、なじみのある定番を守っていました。麺の食感、風味はあるけれど、すっきりしたスープ、メンマが好きなので多めに乗っているのが嬉々たる。叉焼も、もやしの聢り感もまるきりが「自己製」のていねいさを感じるおいしさでした。肩肘張って対面しなくてよい、安心感、気安さが心持よかったです。
その後に来店されたご常連思えるふたりのお客さんも一緒に「おいしい七味唐芥子」について懇切上品に教えてもらいました。
「常連と一見」のように、分け隔てする感じがなく、ごく天然会話ができた、そんな所もこの日のことを覚えていたことにつながっていると思います。
今回訪れたのも、午後の遅い時間で、お客は私一に。店主さんが「クーラーが一番よく作用のはあの席。一番弱いのはこの席」とにこにこ気安いに声をかけてくれました。
誠養軒の店主
地元紙の京都新聞と「著大ブラックホール」「素素粒子」などの文字が並ぶ科学雑誌が置いてありました。「ずいぶん難い雑誌ですね」と言うと、1冊の値段は高いけれど、1か月に1回だから週刊誌を買う一倍安いからと、返ってきました。それに「難いから読むのに1か月はかかるから、ちょうどいい」のだ斯うです。こんな愉快なやり取りをしながらも、手はおろそかになっていません。水餃子を作る利得の片手鍋にお湯が沸いています。

誠養軒の水餃子
手新築水餃子と一緒にず粋祭りの本を見せていただきました

自己製の麺に叉焼、餃子は注文の都度に包んでいます。安心可能おいしさ、満ち足りた気持ちになります。誠養軒はお父さんが始めお店で、53年たちます。「いろいろ新しい店ができているけれど、うちはずっと同じ」この安定感が味にもお店の雰囲気にもあらわれていると感じました。
メニューに書かれた「致す気がなくなり次第帰ります」のひと言や、閉店時刻の「午後11時59分」という併設も茶目っ気があります。斯くみていると「昭和なアナログなお店」という表現が使われ斯うですが、それだけでは少し違った気もします。実はまだまだネットなど一般的ではなかった時期に、いち早くホームページを立ち昇た斯うです。その世界に著しい 精細とお見受諾しました。なかなかに奥が深いのです。
京都の伝統のお祭りについても、「それは知らなかった」という話がどんどん出てきました。

次回が楽しみになるお祭りの話

北野商店街
誠養軒は、北野天満宮のおひざ元の商店街の一番西にあります。取材時はちょうど、起源も平安時代までさかのぼるとされる、北野の天神さんの「ず粋祭」直前の時でした。商店街にもお祭りのフラグが立ち、地区あげての大切なお祭りであることが感じられます。

ず粋神輿につけられていた縄
ず粋神輿の梅鉢のわら細工が飾られていました

ず粋祭の花形「ず粋神輿」を製作する保存会の成員に、店主さんの同級生もいるということで、興味深い話を聞かせてもらいました。ことに、お祭りの名前の由来にもなった、お神輿の屋根を葺くず粋が、今年は天候不順で育てるのが大変だった斯うです。
太室長さが日夕のものを、準備段階までにうまく育てるのは相当な苦労がある斯うですが、本きちんと大変なことだと思います。「ず粋はアクが強いから切り口がすぐ黒ずんでしまうので、日毎に切っている」「ず粋の親芋は、逆さにして根っこをたてがみに診断て獅子頭を作る。そして、お祭りが終わった後は、神様からのおさがりとしてみんなでいただく」等々、知れば知るほど奥は深いのです。
ず粋祭の岩波新書
テーブルの上にず粋祭に関係岩波新書が置いてありました。「神輿の横で保存会が売ってたんや。馴染みやし買わなあかんし」と笑っていました。少し前に買われたものでしょうか。油やたれのしみがついた新書は、その汚れが逆に、日毎に少しずつ篤と読んでいたことを物語っているようでした。
尚又、お客さんのなかには祇園祭の山鉾の関係者もいて、祇園祭についても盛んに曲たり、足を運んでいます。「同じ鉾を見ても、毎年発見がある。あれ程、今年はここを見ておこうとか考えて鉾をまわったらええんや。面白いよ」と極意を授けてくれました。
誠養軒のちょうちん
中華お前と水餃子もなくなり、次のお客さんの来店です。このお二人組もご常連らしく、表の木戸口お前の冷蔵ケースからビアを持って入って来ました。「ビアや水はセルフでお願い」それが誠養軒の流儀です。
はじめはわからなくて、水を飲まずに帰ったのも今となっては笑える話です。つっつと「餃子2人前」の注文です。それをしおに、ごち斯うさまでしたと、立ち上がると「尚又、どうぞ来てください」と忙しく餃子のお守りをしながらも声をかけてくれました。この姻戚、あたたかさが嬉々たるです。暮れなずむ頃。提灯とのれんが夜のお客さんを接待ます。とっておきの京都です。

 

誠養軒
京都市上京区新建町什
商賈時間 午の時~23:59(早く閉止日もあります)
公休日 月曜(ただし25日の北野天満宮例祭の日は商賈)